BronchoQuestの開発ストーリーと技術的特徴
Appleが主催する世界的なプログラミングコンテスト、Swift Student Challenge 2026にて、BronchoQuestがWinnerに選出されました。このコンテストには世界中から数千件の応募があり、革新的なアイデアと技術的実装が評価される厳しい審査が行われます。
BronchoQuestは、医療教育における革新的なアプローチ、実際のCT画像データから構築された解剖学的に正確な3Dモデル、そして符号付き距離場(SDF)を用いた高度な衝突判定システムなどの技術的実装が高く評価されました。
受賞の意義:
この受賞は、医療教育とテクノロジーの融合による次世代の学習環境の可能性を示すものです。従来の気管支鏡トレーニングは実機を使った実習が中心でしたが、BronchoQuestはiPadアプリとして誰でもアクセス可能な学習環境を実現しました。
BronchoQuestの開発は、マイアミでの休暇中に始まりました。ビーチでリラックスしている最中にアイデアがひらめき、その瞬間に「これはWinnerになれる」と確信し、その場でコーディングを開始しました。
医学生として気管支鏡検査のトレーニングを受ける中で、実習機会の少なさと高額なシミュレーター機器の問題を実感していました。「もっと多くの医学生や医療従事者が、手軽に、何度でも練習できる環境があれば」という思いが、このアプリの開発動機となりました。
最大の技術的挑戦は、気管支鏡を気道内部に厳密にとどめる衝突判定の実装でした。単純な物理エンジンでは不十分で、複雑な気管支の形状に対応する必要がありました。
この課題を解決するため、Blender上でPythonスクリプトを用いて符号付き距離場(Signed Distance Field, SDF)を生成し、256³のボクセルグリッドで各セルが最寄りの気道壁までの符号付き距離を格納する仕組みを構築しました。実行時には隣接する8ボクセルの三線形補間によりサブボクセル精度の距離値を取得し、60FPSでのリアルタイム衝突判定を実現しています。
医学教育アプリとして、解剖学的な正確さは妥協できない要素でした。そこで、実際のCT画像データから気道モデルを構築しました。
データソース:LIDC-IDRIデータセット(DICOMファイル)
セグメンテーション:3D Slicerを用いて周囲の肺実質から気管支樹を分離し、OBJ形式でメッシュを書き出し
メッシュ最適化:Blenderで非多様体エッジの除去、内腔粘膜の法線再計算、SceneKitの座標系に合わせたスケール調整
フォーマット変換:Reality ConverterでUSDZ形式に変換し、Appleプラットフォームとのネイティブ統合を実現
256³のボクセルグリッドで構成されたSDFは、各セルが最寄りの気道壁までの符号付き距離を格納します:
カメラが壁に近づくとSDFの勾配ベクトルが押し戻し、完全にブロックされた場合は壁面に沿って移動を投影することで、実際の気管支鏡が組織表面を滑る挙動を再現しています。
BronchoQuestは、WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)とApple HIG(Human Interface Guidelines)のアクセシビリティセクションに定められた基準に対応しています。
さらに、世界中の医療従事者や医学生が使用できるよう、以下の5か国語に対応しています:
Dynamic Type、VoiceOver対応、高コントラストモードなど、幅広いユーザーが快適に使用できるよう配慮しています。
医学生兼ソフトウェア開発者。大学3年生の時からSwiftに触れ、iOS/macOSアプリの開発を続けてきました。医学と情報技術の融合による革新的な医療教育ツールの開発に情熱を注いでいます。
Apple Swift Student Challenge 2026 Winnerの受賞は、Appleユーザとして長年獲得したかったタイトルの1つでした。医療とテクノロジーの両分野で学んだ知識を活かし、次世代の医療教育に貢献することを目指しています。
お問い合わせ:
BronchoQuest@koseiw.com
BronchoQuestは、継続的に進化し続けます。今後予定している機能やアップデートには以下のようなものがあります:
教育機関や医療機関でのご導入、取材、協業のご相談など、お気軽にお問い合わせください。